犠牲者の青木さん出演映画公開

9月12日14時22分配信 産経新聞
 ■「1年たってもまだ暗闇」
 あの日以降、家族から笑顔が消えてしまった。事件で犠牲になった元プロゴルファー、坂本潔さん=当時(53)=の父、正一さん(80)=徳島県美馬市=は悲しみの底から抜け出せないままだ。頼りにしていた息子がなぜ死ななければならなかったのか。小川和弘被告はなぜ否認に転じたのか。「聞いてみたい...」。答えを裁判に求めようとしたが、事件後に腰を痛めて外出もままならず、傍聴をあきらめたという。
 「1年たってもまだ暗闇にいる感じ。何をしているか分からんまま生きて、生活しているだけの暮らしです」。正一さんは、妻の信子さん(74)とつぶやいた。

 無罪を主張する見通しの小川被告に対し、正一さんは「死刑を逃れようと思っとる。(犠牲になった)16人の親、兄弟、嫁、子供の苦しみが分からんか」といらだちを隠せない。

 あの日、正一さんは潔さんの訃報を、三男の武さん(47)からの電話で知った。ショックで床に座り込んだ信子さんを抱き起こし、兵庫県尼崎市の斎場へ向かった。対面した潔さんの顔は傷一つなく、まるで眠っているようだったという。

 潔さんは地元の高校を卒業後、昭和54年に24歳でプロテストに合格した。現役引退後はゴルフ関係の会社を経営。盆や正月は帰省し、正一さんらと一晩中飲み明かした。信子さんは、潔さんが買ってくれたワンピースやセーターを大切に着ているという。

 昨年のお盆。正一さんは潔さんに「おまえは長男じゃから60歳になったら家に帰ってほんまの親孝行せいよ」と声をかけた。事件が起きたのはその1カ月半後。そして今年のお盆は坂本家から笑い声が消えた。

 「長男だし頼りにしてた。この家の希望の灯が消えてしまった」と信子さん。正一さんは昨年秋、自宅の階段で足を踏み外して腰に重傷を負い、介護ベッドで寝たり起きたりの生活だ。「潔が何で殺されなあかんかったのかなんぼ考えても分からん。聞けるもんなら聞きたい...」。そう言って深いため息をついた。

 ■犠牲者の青木さん出演映画公開
 事件で犠牲になった俳優の青木孝仁さん=当時(36)、大阪府岸和田市=の遺作となった映画「火天の城」(田中光敏監督、西田敏行さん主演)が12日、封切りされた。

 青木さんは、織田信長のために安土城を築いた西田さん演じる宮大工の棟梁(とうりょう)の弟子役で出演。事件当日は出番がなく、次の撮影日に備えて休んでいたという。

 オーディションで青木さんを推薦した東映京都撮影所演技センターの西嶋勇倫さん(37)は「志半ばで逝った青木君の生きた証し。多くのお客さんに見てもらいたい」と話している。

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