【甲信越の百選】新潟市西蒲区夏井のはさ木

9月20日7時57分配信 産経新聞
 実りの季節を迎えると、田んぼの周りに植えられた「はさ木(ぎ)」には竹ざおが組まれ、収穫の準備が始まる。刈り取られた稲は、このさおに掛けられて天日干しにされるのだ。田んぼ一面に広がっていた金色の絨毯が巨大な黄金の壁に変わる。越後平野の秋の景色だ。

 はさ木にはトネリコの木が使われることが多い。新潟市西蒲区の夏井地区(旧岩室村夏井)には約600本が植えられている。トネリコの木は生でもよく燃えるので燃料としても使われ、「戦になればたいまつにもなる」とNHK大河ドラマの主人公、直江兼続が植樹を奨励したといわれる。農業の近代化に伴って稲の乾燥に機械が使われるようになると、全国的に天日干しをする農家が減り、新潟県内でもはさ木は姿を消し始めた。

 平成元年ごろから保存運動が起こり、注目が集まりはじめた。これに合わせて、岩室温泉観光協会は「まちまちだったパンフレットや案内板など表記を、地元の発音に近い『はざ木』で統一している」という。

 ところで、その美しさは秋だけのものではない。冬に雪が積もれば、銀世界にたたずむはさ木の列にはなんともいえない郷愁が漂う。春になれば、鏡のような水田にはさ木が写り込む不思議な光景が見られる。

 デッサンに訪れた、地元出身で神奈川県厚木市に住む洋画家の渡辺啓輔さん(77)がつぶやいた。「秋は黄色、冬は白、春夏は鮮やかな緑と1年を通して豊かな色彩がみられる」

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