【甲信越の百選】八ケ岳南麓高原湧水群・三分一湧水

6月28日7時56分配信 産経新聞
 上流からゆっくりと湧(わ)き出した水が池の中央にある三角形の石にぶつかり、東、西、南の3方向に流れてゆく。行楽客が興味深そうに3つに分かれた水の行方を眺めている。

 この湧き水は昭和60年3月、環境庁(現環境省)の「日本名水百選」に指定された「八ケ岳南麓高原湧水群」の一つで、山梨県北杜市長坂町小荒間にある「三分一湧水(さんぶいちゆうすい)」だ。標高1035メートルに位置し、水温約10度というひんやりした水が1日当たり8500トンも湧き出す。

 名前の由来は湧き水の利用をめぐって長年続いた争いを収めるため、3方向の村に3分の1ずつ分配できるように工夫したことから来ている。八ケ岳南麓の標高1100メートル付近は湧き水が豊富だが、下の台地には水田をうるおすだけの河川や湧き水がなく、途中で水を盗まれないように水路を確保するのに人々は命がけだったという。

 文献で確認できるのは江戸時代に湧水が3つに分配されて使われていた事実だけだが、現地近くにある「三分一湧水館」によると「武田信玄が3つの村に水を均等に与えるため水路を3つに分けた」という言い伝えが残っているという。「江戸時代の天保年間に起きた山崩れで濁流に乗って下りてきた白蛇が、三分一湧水付近で消えた」という逸話もある。以来、三分一湧水の主は白蛇とされ、湧水口を壊すと白蛇の怒りに触れると言い伝わる。

 今では、利水権を持つ地区住民でつくる管理組合などが管理し、農業用水として利用。名水というと、つい手ですくって口に含みたくなるが、北杜市によれば「あくまで農業用水。飲料用には適していません」とか。(末崎光喜)

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 ■三分一湧水 近くにそば店「そば処三分一」や地元の農産物直売所、体験工房、湧水にまつわる歴史をパネルやDVDなどで紹介する資料館などを併設した「三分一湧水館」がある。JR小海線の甲斐小泉駅から徒歩約10分。車なら中央自動車道長坂インターから約10分。問い合わせは三分一湧水館(電)0551・32・0058。

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